……… 山の本倶楽部 ………

山行報告

南ア前衛・日向山~大岩山

スペシャルプラン「日本の秘峰」
日程 = 2014年9月28日~29日 参加者 = 6名

 28日(晴れのち曇)、矢立石登山口の駐車スペースは満車、そりゃそうでしょう。久しぶりに晴れた休日ですもの。登山口には『鏡滝コースは下り禁止、登り注意』という警告が貼られていた。

 出だしのジグザク道は単調で、所々現れる合目プレートを励みに登っていくと、じき足元にミヤコザサがソヨソヨそよぎ始める。見上げれば緑鮮やかな雑木林の向こうは青い空。やがて大きなブナも現れ高山らしい雰囲気になってくる。[8/10]プレートあたりからカラ松林で、足元は細かな砂地になった。日向山の双耳の鞍部にアメダスを見やり、緩く登る。広やかな笹原にオヤマボクチやアキノキリンソウが彩りを添えている。山頂付近のカラマツ林が爽やかなので「テント場にもってこいね」なんてお喋りしていたら、目の前に大展望が開けた。

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日向山の雁ヶ原は花崗岩の白ザレ。甲斐駒は雲に隠れて見えなかった

 「ヤッホー!」。白砂の台地に飛び出した。正面には八ヶ岳のキチンとした佇まい、茅ヶ岳や金峰も並んでいる。わたしたちはどっこらしょと荷を下ろし背伸びする。白い花崗岩の異岩変岩、すべて真っ逆さまに切れ落ち恐ろしい。畏怖の気持ちで眺め、さて、ここから砂の斜面を大きく下り、「錦滝」への分岐を左に分け、登り返すのだ。砂地のトラバースは気を遣うところだが、幼児連れのファミリーや若者たちのパーティは何気なく通過していく。

 鞍部の道標には左折の[日向山下山道]しか記されてないが、わたしたちは直進。尾根伝いに登り返し、痩せた岩尾根を西に向かう。道は細いがしっかり延びており、落ちないよう気をつければ、なんら問題はない。岩は深々とした苔に覆われ、ダイモンジソウやナデシコの残り花も咲いていた。

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日向山から大岩山へ八丁尾根を行く。カラマツとシラビソの原生林だ

 木々はほのかに赤味さし、秋の到来を告げている。アミタケ、ハナイグチなど食べられそうなキノコに心残しつつ、大岩を巻き、乗り越え、キレット状の道を通過し、徐々に高度を上げていく。途中、休憩した1680mあたりだけは、面妖な雰囲気が漂っていた。右側には屏風を合わせたような谷が走り、巨大な人面岩が門番のごとく聳え、左側は切れ落ち、正面には崖を這い登る急勾配のルートが延びている。

 そこを上がると尾根上の一本道、軽やかな雰囲気のカラ松林だ。足元には美しい笹が広がり、あるいはしっとりと苔に覆われている。やがて森はシラビソに変わると、シャクナゲが増えてくる。二、三度白ザレの露岩を渡る。左に落ちたら助からないぞと思いつつ、雲の上に浮かぶ富士山の優美な姿に見とれてしまう。その先が駒岩分岐。あっけないテント場到着だった。

 予定には鞍掛山の往復が残っているが、雲が湧き甲斐駒が見えないので、今日の行動はここまでとなった。テント設営をしている最中、赤服単独男が大岩山方面から下りてきた。「どちらから?」、男「雨乞岳から」、「へぇ、すご~い」。そのあとがイケナイ。男「テン場、とられちゃったか、うるさそうだな」。揚げ句の果てに、わたしたちが大岩山ピストンと知ると「フン、それだけ?」だとっ。フン、勝手にドッカに行って寝やがれ、普段おとなしいワタシですが、聞こえない所でささやかに文句を言ってやった。

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駒岩にテントを設営した。「今晩はお米は何合炊く?」

 飯盒でご飯を炊き、大テントにて宴会。じゃがブタスープ、湯どうふ、生ハム、サラダ、イカ、キウリ、ウインナ、おつまみ各種の豪華メニュー。ラストに「ハッピィバースディGさん」と合唱しケーキ登場。そういやケーキを忍ばせたKさんは登山中、やけにザックを慎重に運んでいた。お腹も心も満腹で幸せな就寝。風もなく、雨もなく、まことに静かな夜だった。

 29日(快晴)、5時半、雲ひとつない朝の空に、ぐんぐん日が昇る。富士山が茜色に染まっていく。周りのシラビソの幹も赤く燃え、林下の苔はオレンジ色に変わった。

 サブザックで鞍掛山に向かう。80m下って90m登るのだ。下り始めてすぐ右手の林の切れ目から、甲斐駒が堂々たるお姿を現した。おお、なんと神々しい。さらにその先の鞍部では、くっきりとした奥秩父~金峰山を眺められた。ひと登りで「鞍掛山」の標柱に会うが、これほど山頂らしからぬ山も珍しい。そのまま「展望台」、つまり遙拝所に向かう。わずか5分で南東に突き出た白ザレ岩の遙拝所に到着した。

 甲斐駒ド迫力。手前から黒戸尾根が力強く登ってくる。甲斐駒の右には鋸岳のギザギザがクッキリ並び、中でも大ギャップの切れ込みはオソロシげだ。なんとWさんはうっとり憧れのまなざし~。坊主山もその隣も、ピークは尖り、谷という谷は崖状に切れ落ちている。朝の陽射しはより陰影を深くし、激しい印象が心に刻みつく。遙拝所の石祠は、屋根、本体、台座が分解したままになっていたが、こんな大きな石祠をどのようにして据えたのだろう。台座には無数の名が刻まれ、本体にはなんとも柔和なお顔の観音様が祀られていた。

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鞍掛山の遙拝所(展望台)から神々しい甲斐駒のお姿を遙拝しました

 駒岩テント場に8時過ぎに戻る。ミノ隊長はここに残ってテントの後始末をして下さるとのこと。有難くお受けし、われら5人は8時半、大岩山に向け出発した。

 [やまなしの森林100選・鞍掛山の天然カラマツ林]を過ぎ、緩い起伏を越えると、シラビソ森の登りになる。雨乞岳からの尾根を確認し損なったが、出発して60分たらずで駒薙ノ頭に着いた。目の前の大岩山が地形図で思うよりもっこり見えたので、内心怯む。案の定、最後150mの一気登りはきつかった。ペースは速いし、お腹は減っているし……、しかし、なにくわぬ顔をして大岩山に到着できた。

 シラビソとダケカンバとシャクナゲに囲まれ、展望はないけれど静かな山頂は、わたし好みだ。ふと小川山を思い出した。その時、現れたる黒服単独男、烏帽子~三ツ頭を経て黒戸尾根を下るとおっしゃる。この地域に精通されているご様子で、「烏帽子岳まで?、大丈夫ですよ。一箇所、一枚岩のところは中央の鎖を使わず右を巻いた方がよいです、そのあとの道も整備されていますよ」と親切なご助言。鞍掛山にはヤブ尾根経由で来られたそうだ。「ありがとうございました」と見送ったあと、「あの人、きっと日帰りと思うわ」「パッキングが綺麗だし、偉ぶらないし、ホンモノの強者よね」と、女性たちは憧れの眼差しを八丁尾根に向けたのだった。「これで決まりね、今度はわたしたちが烏帽子岳から甲斐駒に行きましょう」「わたしも行きたい」「わたしも」「わたしも」

 駒岩に戻ると見事にテントは撤収され、広々とした山頂に戻っていた。 「ありがとうございました」。するとミノ隊長がサプライズ発言。「もうすぐ、よく知ってる人が来ますヨ」って? アレアレ、鞍掛山から戻ってきたのは、直前キャンセルのSさん。昨日は突然に仕事が入り、今朝早く矢立石登山口から来られたそうだ。これで7人揃って下山できる。

 昨日来た道を戻るのだが、陽射しが明るく違った景色に見える。下草の笹もカラマツ林もダケカンバの幹もキラキラ輝き、かの人面岩もアッケラカンとしていた。ツツジやナナカマドの紅葉が進んだように見えるのは、気のせいではないだろう。日ごと、山は本格的な秋になっていく。

 雁ヶ原の白砂は紺碧の空に映え、いっそう白く眩しさを増した。山ガール山ボーイたちが華やかに群れ、ファミリーの集うなごやかな山頂風景である。わたしたちはここで腰を下ろし休憩、I氏が心を込め濾れて下さった薫り高きコーヒーを、のんびり味わった。

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帰りの日向山で登頂を祝う美女?たち

 立ち寄った「尾白(おじら)の湯」、露天のひとつの“赤湯”はとても成分濃いらしく、とても効能ありそうなので、とてもありがたくいただいた。チャンスがあればまた来たい。

 帰路、中央道で渋滞に捕まったけれど、高尾には20時半に戻ることができた。山の本倶楽部の山行は、ミノ隊長が計画・案内・運転、全て引き受けて下さる。ひとりご苦労させて大変申し訳ないけれど、今のところ「ありがとうございます」とお礼を言うしか能のないわたしです。そして皆様、今回もまた、ありがとうございました。

(Hiroko.T・記)

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