……… 山の本倶楽部 ………

山行報告

南会津・博士山

[残雪のブナの山でテント泊]
日程 = 2013年4月28日〜29日 参加者 = 10名

 残雪の倶楽部山行は帝釈山脈・燕巣山以来だ。あれから8年が経つ。「戻ってきてくれて有難う」と大ベテランKさんの優しい言葉……。 前日に郡山のSさん宅に大勢で泊めていただく。M子さんの愛情たっぷりのお鍋の添え物は留まることのない会話のオンパレード。濃紺の硬さから柔らか緋色まで……登る前からこんなに盛り上がっていいの? というくらい大爆発の前夜祭だった。

 博士山は行けない人が何人も出たらしい大人気の山だ。翌朝Sさんに車を出してもらい大成沢の駐車場で身支度を整える。

会津の春は関東より二、三週間遅く、登山道を少し行くとスプリングエフェメラルに出会う。湿った登山道を歩き、道海泣き尾根取付点からは名前通りの急な登りとなった。雪の重みから解放され目が覚めたばかりの俯き加減のショウジョウバカマや艶やかな葉を一面に広げるイワカガミが急登の辛さを癒してくれる。ハシゴ・ロープがこれでもか……これでもか……と出てくる。

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道海泣き尾根に泣かされます

 更に登るとシャクナゲ洞門。巨大な岩壁の脇のロープを伝い、岩の隙間から額縁絵画のような樹林を覗く。シャクナゲの身頃には周りの木々は深みを増し、その艶やかさでいっそう登山者を楽しませてくれることだろう。振り返ると堂々たるブナの大木、見事なことこの上ない。マンサクやタムシバも控えめに咲いている。

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重荷を担いで尾根を登ると主稜線が近づいてきた

 慎重に雪上のルートをとり、ようやく稜線に出る。ミノさんとIさんが今晩のお宿の調査に出かける。私達は一面の雪景色を見ながら、見渡すかぎり人工物の何もない山であれこれと今宵の宴と博士山の頂に想いをはせる。

 テント地が決まり、青い空の下、青森育ちのNさんの見事なシャベル捌きで素早くテント設営が終わる。

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テント地の整地中

明日のほうがさらに天気がよさそうということで山頂はお預けにし、明るいうちにカンパーイ!まだ2時だけど? 登ってくる間誰にも会わなかったし、五月連休の雪山でこんなに嬉しい時間を誰にも知られず過ごしている私達。いいな~と乾杯の前に酔ってしまった。このまま私達だけでこの白い山を独占かと思っていると、ヌ・ヌ・ヌ人の気配が、午後四時なのに……。「お疲れさんです」の声は登山者ではなく地元の森林関係者か? この二人は山頂へは向かわず姿を消した(近洞寺尾根を下った。山開きのための偵察だったかも)。

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テント設営を終え寛ぎタイム

 明るいうちに始まった宴は暗くなって更に盛り上がり、ナ、ナント、Kさんがテントの中で贅沢な豚汁とキムチ鍋を作って下さった。うま~い。うますぎる。テントだけでなく鍋材料まで背負って登るなんて、細身の身体であの体力は以前誰かが書いていたけれど「山の本倶楽部の七不思議」である。Kさん有難うございました。本当に美味しかったです。外に出てみると区別がつかないほどの星々が頭上に輝き、はるか彼方には会津若松の灯りがともり、私達の心にもシ・ア・ワ・セの灯りがともったのでした。

 翌朝、五時に起きてすぐ頂上にアタック開始。積もった雪が朝日を受けてキラキラ光り、ブナが静かに私達を迎えてくれました。雪の上には動物の足跡と我らが足跡のみ。風で木々から飛ばされた雪の塊が細かく板ガラス状に雪面に張り付き凍っています。あそこが頂上か? 嗚呼もったいない、もう頂上なの? 山頂でミノリーダーと久しぶりの握手をする。初めて残雪の山でミノリーダーと感動の握手をしたのは、もう10年以上前の会津の山毛欅沢山だった。それまで尾根歩き専門の私には残雪の山でテント設営、しかも雪上での焚き火に目から鱗のまさにワクワク体験。こんな世界があったのか──あの時の胸キューンが蘇る。

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快晴の下、山頂へ向かう

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1時間で山頂に到着

 山頂でI夫人お手製のリンゴのCCレモン煮をいただき、朝ごはんを済ませ、はるか彼方のあの山、この山を同定する。志津倉山、磐梯山C会津駒C飯豊連峰? 皆さん本当によくご存知だ。スッキリした空には飛行機雲が一面の青色を二分するように走っている。青い空の反対側、この白い雪の真下には一等三角点の標識があるはずだ。「まだここにいたいよ~」の声を押し込め山頂を後にした。

 登りでは気づかなかったこの威風堂々の木、山の守り神のようなこの木は何? ヒノキでもアスナロでもない(少し葉をいただいて帰宅後調べたらクロベだった)。そのクロベに圧倒されながらテン場に急ぐ。風に飛ばされないよう雪深く沈めたペグを掘りおこすのに思いのほか時間がかかり、8時すぎにテン場を後にした。

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クロベの大木

 下りは登りと同じ道海泣き尾根。滅多にないほどの急な尾根を慎重に慎重に下る。が途中で滑ってしまった。下にいたKさんにぶつかる不安が滑っている間中グルグル頭を回転したが10メートルくらい滑った所で運よく止まった。又Kaさんはスッポリと両足が穴にはまってしまって足が出ず頭から私目がけて落ちてきた。下にいた私は両手を拡げて背の高いKaさんを抱きとめた(?)。片側がすっぱりと落ちている尾根では特に慎重を期して下る。次々と出るリーダーの声かけをこだまのように後続に伝え、全員無事に道海泣き尾根を降りた時はホッとすると同時にヤッター。

 樹林帯を抜け博士山山行が終わる頃、又スプリングエフェメラルが私達を出迎えてくれた。大地に根ざし逞しいのに儚げでまるで山の本倶楽部の女子のようではないですか。ン? エッ?

 大成沢の駐車場では既にSさんが待っていて下さった。車で西山温泉郷のせいざん荘に向かい、汗を流しお昼とした。湯につかりながら思いました。山に入るとどうしてみんな子どもに還るんだろう? どうしてみんな安心するんだろう? どうして嫌なことを忘れてしまうんだろう? どうして?

 博士山は奥深い会津の静かで豊かな山の素晴らしさを幾重にも感じさせてくれました。忘れられない山になりました。あの広大なブナ林が色づく頃、又ぜひ登ってみたいです。

(Masumi Tuji 記)

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